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2004/03/23 シュツットガルト近郊(?):お世話になりました
早朝の電車で目的の店に向かう。
店、というよりは工房とでもいうのだろうか?
アンティーク物のオーディオ製品をオーダーメイドで作っているという人のもとへ。
同行者にとっては、この旅の目玉である。
なにしろ彼は、この工房に6年も前に注文していながら
技術的な問題により今の今まで先延ばしを喰らっていたというのだ。
ならば直接行って催促してやろうじゃないかとの息込み。
しかし、その道のりは遠い。
左の写真はヘルベルティンゲン駅。シュツットガルトから南へ150km。
「近郊」という表記も考え物か。同じ距離を更に南へ行けばもうスイス国境という位置だ。
ウルムでローカル線に乗り換え、森と湿地帯の続くどんよりとした眺めの中を進む。
時折、霞みの向うに小さな集落や丘の上に古城が見える。
着いてみるともう何にもない街だ。
地元の方には決して聞かせたくない言い様だが、なんという所に来てしまったのかと正直思った。
まあいい。目的の工房を探そう。
住所の書いてある紙片を駅員に見せ、どの辺りかと問うのだがまるで知らないという。
居合わせたおじさんも分からない。が、駅長らしき人が気づいた。曰く
「こりゃヘルブレヒティンゲンだ。ここはヘルベルティンゲンHerbertingen。
あんた方が行きたがってるのはヘルブレヒティンゲンHerbrechtingenだよ」
まいった!詰めが甘かったのか!というか間抜け?
ヘルブレヒティンゲンはシュツットガルトからだと東へ50km程の町。
ちょうどウルムでの乗換えで逆方向の路線上にある。
ユーレイルパスを使うのはもったいない距離だったので区間乗車券を購入して
ここまで来たのだが、行き先の表記はヘルベルティンゲン。
もう一度ヘルブレヒティンゲンまでの切符を買いなおさねばならない。
実にもったいない出費だ。ところが、である。
「切符を買いなおすべきか?」と尋ねると、ちょっと思案した駅長は
切符の裏に何事かを書付け、サインの上にハンコを押して我々に手渡し、
「車内の検札にあったらこれを見せれば大丈夫だ」と言う。(写真下の画像参照)
誠に慈悲深いおはからいだった。間抜けを恥じ入るとともに改めて感謝の意を表します。だんけしぇん。
3、40分ほどしてやってきたウルムへ戻る電車に乗り込むときも
手を振って見送ってくれた。
さて!気を取り直してヘルブレヒティンゲンに向かおう。
しかし旅の疲れがたたったか、また失敗してしまう。
車中での居眠りからハッと醒めるとそれらしき駅に着いたところ。
慌てて降りるとそこはヘルマリンゲンHermaringen。ヘルブレヒティンゲンより一つ手前の駅。
最初の‘her’を見て早とちりしてしまったのだ。
車内アナウンスというものが無いので、到着する駅の表示が頼りだったのだが…。
それでも南ドイツは暖かく迎えてくれる。
右の写真、三角屋根の駅舎の手前にある平屋の建物はカフェになっているのだが、
次の電車を待つ間ここで一服入れたときのこと。
こんなところで日本人を見るのは珍しいことなのか、客や店のマスターがちらちらとこちらを見ている。
いや、平日の昼間から大ジョッキでビールを呑んでるあんたらも我々には物珍しいんだけどね。
コーヒーを注文した時、マスターが声を掛けてきた。「写真を撮りにきたのかい?」
いつも持ち歩いていた三脚が気になっていたようだ。
我々は間違えてこの駅で降りてしまったのだと告げると、
「そうか、それは残念だったね。じゃあコーヒーは店の奢りにしよう」と、
コーヒー代を只にしてくれた。
失敗に悔いつつもそれを凌ぐ感謝の念に溢れる一日となった。
え、当の目的?おかげ様で果たすことができました。
残念ながらヘルブレヒティンゲンや工房での写真は撮れなかった。
あとは特にお見せするようなものもないので、ドイツ篇はこれにて終了。
この夜、今回の旅行での最終訪問国、フランスへ。
2002年11月7日
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