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2004/07/15 アッシジ:祭壇(聖ルフィノ教会)
行く当ても定まらぬまま、教会を訪れてまわる。
コムーネ広場から北東へ坂を登るとすぐに見えてくるのが
ここ、聖ルフィノ教会。
ミネルヴァ教会とは対照的に、簡素な造りである。
フランチェスコの弟子にルフィノという名の人物がいたと伝えられているが、
この教会がその名に因むものかは不明。
因みに、弟子ルフィノを巡っては、いくつかの面白い話が残っている。
1.クソ食らえ(Apri la bocca,e mo)!
ルフィノが悪魔の誘惑に唆されそうになっていた時、
フランチェスコは彼にこう助言した。
「今度悪魔が来やがったらよ、こう言えや。クソ食らえってな!」
かくして、ルフィノは悪魔にクソ食らえと怒鳴りつけ
魔の手から逃れたという。
恫喝された悪魔は尻尾を振って逃げ去り、
腹いせにスバシオ山に雷を落としていったそうな。
その跡を物語る瓦礫の山が今も残っているとかいないとか…。
2.パンツの説教
ある時フランチェスコは、ルフィノに日曜の説教に行くよう命じた。
しかしルフィノは、時折りしも霊的な瞑想に満たされていて
とても説教できるような心境ではないと答える。
これにフランチェスコは激怒。その挙句、
「てめえふざけんな!パンツ一丁で説教してこいや!」
フランチェスコ会会則のひとつは「従順」であるからアニキの命令は絶対だ。
ルフィノはパンツ一丁で説教壇に立つ。
どよめきと嘲笑にあふれかえる教会。
負けじと説教を続けるルフィノ。
その時だ!
教会の扉が突如として開かれるや
フランチェスコがやはりパンツ一丁で闖入!
なんてこった!フランチェスコ会は阿呆のカタマリや!
しかし、聴衆に爆笑の渦が巻き起こるのも束の間。
フランチェスコが清貧と美徳について語りだすと場は一転、
参列者は猛烈な涙に誘われ、内省を余儀なくされた…。
そう。フランチェスコは己の命令の理不尽さ・傲慢さを深く反省し、
ルフィノの苦境を助けに来たのだ。
(もうちょっと早く気づけばよかったね…。)
3.ルフィノってやべえよ
フランチェスコは時折、弟子たちに質問して回った。
「一番すげえ魂持ってる奴って誰だと思う?」
弟子たちはこぞってフランチェスコの名を告げたが、彼は言う。
「とんでもねえ。俺なんか最低最下もいいとこよ。いいか、
一番すげえのはな、ルフィノの野郎さ。ありゃやべえよ?マジで。」
とにかくすげえ奴だったらしい。ルフィノは。
以上の話、詳しくは14世紀頃に編纂された
『聖フランチェスコの小さき花(I Fioretti di san francesco)』、
29章から31章に描かれている。
上記の要約は余りに偏りがあるので、詳細を知りたい方は
『聖フランシスコの小さき花』(永野藤夫訳、講談社)をあたってみて下さい。
2003年2月10日
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