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2004/10/19 アッシジ:薄化粧


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フォンテベラ通りから南東を望む。
連なる瓦屋根には一面、薄く雪が積もっていた。
日本の古い城下町を思い出させるような不思議な光景。
ファサードに3つの丸窓を持つ建物はサン・ピエトロ聖堂。


これを撮影する前、聖フランチェスコ聖堂にもう一度足を運んだ。
聖堂内は本来撮影禁止。
朝早くいけば誰もいない内に盗撮?出来るかも、などと目論んだのだが失敗…
この町の衆は信心深くてイカン(笑)

地下聖堂に入り、改めて祭壇上のフランチェスコの棺(とされている)を眺める。
とても聖者が入っているとは思えないような、極めて質素な石棺。
捧げられた蝋燭やお香の香りが辺りに立ち込め、参列者に
緩やかな温もりを与えていた。
今朝も5時半から町中を徘徊していたものだから、冷え切った体が解けていくようだ。
しばし末席を汚させて貰おう。

幾度と無く表明しているが、僕は無信仰の人間だ。
そんな輩としては、こういう閉ざされた石棺を眺めていると、つい
「ホントは誰が入ってんだよ?」などと勘ぐってしまう。
ふと気づくと、通路を挟んだ向こうで
一人のおじさんがずっと、手を組み頭を垂れて祈っている。
じっとしたまま、動かないでいる。
僕は横目で彼を見、もう一度石棺を見上げた。

…中身なんか誰だって、いいじゃねぇか…

先の疑問が、至極つまらないものに思え、僕は小さく呟いた。
もういいや。
席を立って地上に出る階段へ向かう。ホテルに戻って熱い風呂でも浴びよう。
最後にもう一度だけ棺に、ではなくおじさんに視線をやった。
どちらかといえば、その中にこそより確実に
フランチェスコがいそうな気がしたのだ。

アッシジの写真はこれにて終了。
次回は帰路の途上、フィレンツェより。

2003年2月13日

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