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2004/06/10 移動中:雪のトスカーナ
晴天続きのヴェネツィアを離れるに連れ
厚い雲が空を覆いはじめる。
フィレンツェまでの途上、トスカーナの平野はうっすらと雪に包まれていた。
この日の朝7時、チェックアウトのためにホテルのロビーに降りた。
カウンターには、例のパトリック氏が待ち構えている。
昨晩、この時間にチェックアウトすることを伝えていたからだが、
彼は朝早く出発する私のために、簡易なものながら
パンにジュース、チーズの準備までしてくれていた。
本来ならこのホテル、(いわゆる冬時間のためか)朝食は7時半から。
朝食は取らずに駅に向かうつもりでいた私は、少なからず感動してしまった。
さほど時間に余裕があるわけでもなかったので
その場ではジュースだけを飲み、
パンとチーズは紙ナプキンに包んでお持ち帰り(まだ帰らないけど…)。
電車の中で頂いた。
連日、異例の時間に扉の鍵を開けてもらうなど
彼には色々とお世話になりました。
改めてチップとともにお礼を述べてホテルをあとにした。
駅までは、市内を逆S字に貫くカナル・グランデを辿る水上バスに乗って向かう。
古ぼけながらも美しい街並み。サルーテ教会、リアルト橋などを水上から眺めて
ヴェネツィアも見納め。
サンタ・ルチア駅では様々な人模様。
2人連れの修道女、旅行者、通勤客…。
とりわけ目を引かれたのは、10人程の親族一同に見送られて列車に乗り込む青年。
20歳前後くらいだろうか。
見た瞬間には「大袈裟だなあ、さすがイタリア。」などと
のんきなことを考えていたが、発車する頃に思い至った。
彼はひょっとしたら、これから兵役に就くのではないだろうか…。
イラクと米英の開戦も時間の問題となっていた時節。
思えば、家族の表情もあまりに不安げであった。
調べてみたところ、確かにイタリアには徴兵制度がある。期間は通常11ヶ月程度。
2006年をメドに制度を凍結する方針であるらしい。
昨秋、イラクのナシリアに展開するイタリア軍に
悲劇的な事件が起こったとき、少なからずこの男のことを思い出した。
2003年2月9日
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