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2006/11/16 アテネ:リカビトスの丘より


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日付変わって7月6日。
恐るべきことに、この日はほとんど何もしなかった。
いくつか博物館を回ろうと思っていたのだが、
翌年にアテネ五輪開催を控えたこのとき、
世界屈指の収蔵物を誇る国立考古学博物館は全面改修工事のため閉館とのこと。
これは萎えるなあ。

どうにも疲れもたまってしまっていたので、いたしかたなく
日中はずっとホテルでテレビを見たり本を読んだり惰眠を貪ったりして過ごした。
テレビでは、「ポケット・モンスター」などの日本アニメをやっていた。
聞きしに勝る人気のようだ。
ギリシャ語の吹き替えの中に「ピカチュウ」だのと、奇妙な固有名詞だけが聞き取れてしまうのが
可笑しかった。
しばらく適当にチャンネルといじくっていたら、もっと吃驚した。
画面に映った白黒の男。三船敏郎じゃないか。どうしたんだ。
野卑で聞き取りにくく、それでいて懐かしみのある日本語がスピーカーから流れる。
世界のミフネが「おう、親爺!」とダミ声でしゃべると、画面の下部に「Hey, old man!」と一瞬英語字幕が流れ、
即座にそれを覆うかの如くにギリシャ語字幕が現れる。
なんてこった。これは黒澤明の『用心棒』じゃないか。
「拙者、桑畑三十郎、いや、もうすぐ四十郎になりますが・・・」なんて場面は、どう訳したんだろうか。
などと気にしつつ、結局最後まで観てしまった。

そうこうしているうちに、日も傾き始めてきた。
ようようと部屋を出て、特に何をするわけでもなく
街の北東にそびえるリカビトスの丘に登ってみる。
ここからの眺めもいい。

2003年7月6日

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