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2007/02/22 リエージュ:レオポルド通り


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朝の静けさを楽しみつつ、適当にホテルに戻ろうかと思い
「最後に一枚だけ撮っておくか」と、来た道を振り返りレオポルド通りを撮影していると
東の低い雲の隙間に、たちまち朝焼けが照り始めた。
橋の上から見たら綺麗だったろうなあ・・・

この後、先のアルシュ橋まで戻ってみたが、朝焼けは本の数分足らずで終了。
あっという間に、ただの曇天模様に戻ってしまった。

川沿いのベンチで一服し、
ぶらぶらと路地を散策しながらホテルに戻る。
部屋で寛ぎつつ三脚をバッグに仕舞おうとした瞬間、妙な違和感を覚えた。
何か足りない気がする。
もう一度、三脚を見てみる。
ない。雲台がない。
雲台とは三脚の部位名で、要するにカメラを乗っける台の部分のことだ。

三脚を持って散策するときは
布のベルトを結わえて肩に背負うようにしているのだが、
どうやら歩いている途中にネジが緩んで、雲台を落としてしまったらしい。
MDウォークマンで音楽を聴きながら歩いていたから、落とした音に気付かなかったのだ。
アレがないと三脚にカメラを固定できないじゃないか。
そうなると楽しみの夜景もまともに撮れなくなる。
ベルギー旅行も後半に入ろうというところで、何という不覚!
もうだめだ。ムーズ川に飛び込むしかない・・・
などと落ち込んでいる場合ではない。
最後に三脚を使った場所を必死で思い返す。

レオポルド通りで写真を撮ったあと、ムーズ川沿いの
郵便局前の駐車場で一服した。
その時、三脚をベンチ脇に立てて寄りかかって休んだ。
雲台のレバーにハンカチを引っ掛けた記憶があるから、
その時点ではまだ雲台はあった筈。
あの駐車場からホテルまで来た道を辿ればいい。
鵜の目鷹の目で路地を見渡しつつ急ぎ足で探しに出る。
たしか休んでいた時、駐車場では清掃員が朝の清掃を始めていた。
もしあそこに落としていたら、急がないとゴミと一緒に捨てられてしまうかもしれない。
そうなったら、自分にとってはこれ以上旅を続けてもナンセンスだ。
他に色々楽しいこともあるが、行く先々の夜景を撮るのが旅の何よりの眼目なのだ。
アレがなければ旅を続けるモチベーションを保てないだろう。
(コラ、そこ!「撮れても大した写真でもない癖に」とか笑うんじゃない!)
今まで撮ったフィルムをあの郵便局からサイト管理人に送って、
あとはムーズ川に飛び込むしかあるまい。
焦りのあまり愚かな腹の決め込み様であると今ならば笑えるが、
この時は結構本気だった。
果たして雲台は、まだあった。やはり郵便局前の駐車場に転がっていた。
これまで三脚を立てて撮ってきた数々の風景が、一気に脳裏を駆け巡る。
ああ、やっぱり俺はお前が居なければ何もできないのだ。
深い安堵のため息とともに雲台を拾い上げ、改めてホテルに戻る。

やれやれ。今朝はご飯がおいしく食べれそうだ。

2004年8月27日

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