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2007/02/28 デュルビュイ:断崖の上へ
断崖の上に出られるかどうか。登ってみなければ分からない。
ということで、登ってみることにした。
とは言えさすがに断崖をよじ登るわけにはいかないから、脇の斜面から当たってみよう。
数時間前、東の山から西の山まで移動するときは、この北の山の更に北側、
山の中腹あたりを大きく迂回する舗装された道を通った。
その舗装道から山頂へ行けそうな獣道を直感で選び、茂みの中へと分け入る。
なあに、こんな小さな町なのだ。街中ですることもなくなって、
私と同じように街を見渡そうと、この断崖の天辺を目指して登った暇人くらい
いくらでもいただろう。その跡がきっとあるはずだ。
細い獣道を追いながらの行程だが、気分は不思議と楽観的だった。
そもそも「山」と言えるほどの高さがあるわけでもないし、
向かうべき方角さえ間違わなければ、きっと目指す場所に辿りつけるだろう。
実家の福岡にいたころ、私はよくこういう山道を徘徊したものだ。
別にそういうところに住んでいたワケではないが、近場の山に登りに行っていた。
あれは立花山という山だった。中学から高校にかけてのことだ。
それから約10年、ベルギーくんだりまでして名も知らぬ山で
同じようなことをしている自分が、ちょっと可笑しかった。
方角を時折気にしながら、山道を登っていく。森はますます深くなる。
曇り空のためでもあろうが、木々に覆われた獣道は昼なお暗い。
後で下りるときのことを考えると少し不安になったが、
この際あまり考えないことにした。
2004年8月27日
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