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2007/03/07 デュルビュイ:街全景 2
夕暮れ時を迎えるデュルビュイ。街の灯りが徐々に映え始める。
空の暗さと街の明るさが入れ替わるように
それぞれに強みを増す。
夕暮れ時の空も街も、一瞬一瞬にその彩りを変化させていく。
それに連れて雨足も段々強くなってきた。
もはや雨粒も大きくなり、土砂降りの様相を呈している。
三脚を立て、ハンカチでレンズを拭いつつ何枚か撮影する。
しかしそれもやがて限界が来る。
何かと便利で常備しているバンダナも動員してレンズを拭いていたが、
どれももうびしょぬれ。
結果、半端にしかレンズを拭えず、光が妙に散乱した写真になってしまった。
まあしょうがないですね。
「空がまだ青いうちに帰ろう」
そうだ。真っ暗闇になっては、日中に帰り道の目印として
憶えておいた視覚情報も全くの無駄になってしまう。
切りのいいところでカメラをバッグに納め帰路につく。
しかし甘かった。
日中でさえ暗い森の中が、果たして夕暮れ時にどうなるか。
推して知るべきであった。
木立の中に一歩入ると、もう何も見えない。
信じられないくらいの真っ暗闇。
目をつぶっていても開いていても同じようなものだ。
どこが来た道か、どこに何があるのか、何一つ目に映らない。
ライターで辺りを照らそうとしてみるが、ほとんど役に立たない。
根気よく見据えようとすれば獣道と茂みの区別くらいは付けられそうだが、
そんなに長く点火していると指を火傷しそうだ。
加えて木の葉の重なりが雨を集めてしまうのか、
降りかかる雨粒はとても大きく、一旦手に落ちればライターの火を瞬時に消してしまう。
絶対絶命・・・とは言い過ぎだが、最悪この森で雨の中の野宿か・・・
愚かなことをしたものだ。まあそれは今に始まったことではないけれど。
段々と気持ちが萎えていく。ところで今、何時だろう・・・
通じないのは百も承知ながら、時計替わりに持ち歩いていた携帯電話を開く。
20時半くらいだ・・・アレ?何だろう、この違和感・・・吉兆の違和感・・・
もう一度、携帯電話を開いてみる。
・・・明るい。明るい!5秒くらいだが明るい!
そんなに広範囲を照らせるわけでもないが、携帯電話の画面から発する光が
辺りの木々を微かに照らし出す。コレダ・・・!
最後の活路を見出した。
携帯電話を開いて、画面を足元に照らしながら獣道と茂みとを判別する。
5、6歩進んでは開き直す。
焦ってはいけない。
直感で帰るべき方角を探りつつ、ケータイの灯りで足元を確認する。
辺りの木立からは、バタバタと雨粒の音が響く。雨足は強くなる一方だ。
旅行には勿論、折り畳み傘くらい準備するけれど、
こういう時に限ってホテルの置きっぱなしというのが哀しいところだ。
もうパンツまでぐっしょりだが、「焦ってはいけない」とひたすら言い聞かせる。
確実な道を選び、ぬかるみの獣道を一歩一歩と進む。
昼の記憶から言えば、とにかく下りさえすれば
街から近かろうと離れていようと、どこかしら舗装道に至る筈。
そこに着きさえすれば、街までは1本道で帰れる。
30分ほど掛けて、予想通り舗装道に出ることが出来た。
最後は1mくらいの急斜面を飛び降りるハメになったが・・・。
街灯に照らされた雨の舗道をてくてくと街まで戻る。
灯りというのは本当に有り難いものだ。
途上、この日の朝にリエージュで体験した「雲台紛失事件」が脳裏をよぎった。
まさか山の中に雲台を落としてや・・・大丈夫だった。
この旅行以後、旅には必ず懐中電灯を持ち歩くようにした。
2004年8月27日
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