壁面に残る無表情な聖人の壁画。 中世の時代、聖人は表情を顔に出さないものとされた。 それが当時においては、「聖性」を表現するうえで有効だったのだろう。 「キリストは笑ったことがあるか」を巡って 真剣に議論が繰り広げられたこともあったとかなかったとか。 『薔薇の名前』でそんなエピソードが描かれていたような気がする。 まるで「アイドルはウンコをするか」と言い争う 80年代のアイドルおたくのようにも思え、 「そんなワケあるかい!」とツッコミを入れたくもなるものの、 こうした表現方法や議論の裏には 当時の人々がどんなことに尊厳を感じ、畏敬の念を抱いたか、といったことを 推し量るヒントが隠されていたりもするものだ。 2005年8月23日