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2008/07/01 モスタル:セルビア人墓地 3
コンクリートの小道も途中でなくなってしまった。
万が一のことを考えると、どうにも土の地面は踏めない。
墓石の周囲を囲む縁石伝いに、しばらくセルビア人墓地を眺め歩く。
「そんなところに私はいません」と歌になっても、
さすがに人様の墓を踏みつけるのは躊躇われる。
割と小奇麗に造花が飾られた墓碑を発見。
夫婦の名が刻まれ写真が貼られている。
一緒に入ろうとこの墓を立てたのだろう。
夫の没年は1985年。
ユーゴスラヴィアがまだ一つの国だった頃だ。
妻の没年は彫られていない。
彼女が生きていれば75歳(旅行当時)。
未だ健在、ということだろうか。
それとも紛争で街を追われ、別の街で・・・?
モスタルは、歴史的にはセルビア人が多く居住する地域だった。
ここで生まれ育ちながら、ボスニア紛争で追い出されたセルビア人もかなり多い。
彼らは今、どこでこの街を、この墓地を思い起こしているのだろう。
しばらく辺りを歩いていると、
遠くで墓の清掃をしている老夫婦の姿を見かけた。
少しずつ、戻って来ているのだ。
決して取り戻すことの出来ないことも余りに多いのだけれど。
2005年8月27日
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